日系移民の寿命が縮んだのは?
「和食」は、世界一の健康長寿食である。
これは私たち日本人が、案外見落としていることなのである。
海外の研究者は、私たち日本人が思う以上に強い関心を日本の食「和食」に抱いている。
それは鮨が世界中でブームだというような表層的なことではない。長寿や健康といった医療面を通してのことである。
しかしここでいう「和食」とは、ハレの食事ではなく、我々日本人が、普段家庭で食べているちょっと西洋化した「和食」のことである。
日本人の平均寿命がはじめて世界1位を記録したのは、昭和54年(1979年)である。
以来、東日本大震災で死者が多数出た2011年を除き、ずっと1位である。
実は、和食の持つ健康長寿効果に、いち早く目を付けたのは、我々日本人ではなく、アメリカの研究者たちだった。
調査対象にしたのは、日系ハワイ移民である(ニホンサン研究、65年に調査開始)。
ハワイ移民1世は、日本にいる頃と変わらない食事(和食)を食べていたため、寿命も日本に住む日本人と変わらず、がんや心筋梗塞にかかる割合も同じだった。
しかし、移民2世になると、それらの病気の発症率が上がり、寿命が2~3年短くなってしまった。移民3世では、さらに短命になった。
1世と、2世3世の生活様式を比較しても、違いがあったのは食事だけだった。1世は和食を食べていたが、2世、3世と代が下るにつれて、ハワイの食習慣を取り入れていったのだ。
これはちょうど、今日本で問題になっている「食の欧米化」が急速に進んだ状態と同じである。
日系ハワイ移民は、現地の食事が原因で、がんや心筋梗塞にかかりやすくなり、寿命が短くなってしまったのだ。
この研究を発端に、日本人の食事は健康有益性が高いのではないかと考えられ、世界中で和食の研究が始まったのである。
まず研究者たちが注目したのは、和食に使用される食材の成分だった。
和食には野菜や豆類など、植物性の食品が多い。肉より魚介類をたくさん食べる。納豆や味噌の発酵食品、海藻、緑茶など、体の調子を整える食品も豊富だ。
それらに含まれる成分の分析により、「和食は低脂肪で、低カロリー」ということが科学的に実証されたのである。
研究は学会でも注目を集め、和食の健康効果が世界中で知られるようになったのである。
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